【基礎】リチウムイオン電池とは(2)

リチウムイオン電池の原理

 前回の記事で、他の二次電池と比べて、リチウムイオン電池は高容量であるため、広く普及していることを説明しました。本記事では、何故リチウムイオン電池の容量が高いのかを解説したいと思います。そのために、まずリチウムイオン電池の原理について説明します。

 リチウムイオン電池の中には、一般的に「正極」、「負極」、「電解液」、「セパレータ」の4大部材が含まれています。この構成はどういった形状のリチウムイオン電池であっても共通しています。それぞれの材料についての簡易的な説明は次の通りです。

  • 正極…プラス極。正極の中の「正極活物質」がリチウムイオンを蓄える機能を持つ。
  • 負極…マイナス極。正極と同じく「負極活物質」がリチウムイオンを蓄えることができる。
  • 電解液…電圧がかかったときにリチウムイオンを移動させることができる。
  • セパレータ…正極と負極の間に位置し、二つの電極が接触しないように防いでいる。小さな穴が無数に開いており、電解液は通ることができる。

 続いて、リチウムイオン電池を充電したり、使用する(放電する)ときにどのような反応が起きているのか説明します。文章だけではわかりづらいと思いますので、経済産業省の資料から引用した下図を用います。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/chikudenchi_sustainability/pdf/001_s01_00.pdf

 リチウムイオン電池を充放電するときに起きている事象は、簡単な言葉で言うと、「正極と負極の間をリチウムイオンが入ったり出たりする」ということに尽きます。正極と負極それぞれの中には、「活物質」と呼ばれる「リチウムイオンの箱」のような材料が含まれており、リチウムイオンが「リチウムイオンの箱」の中を出入りすることによって、電池からエネルギーを取り出したり、逆にエネルギーを貯めることができる仕組みになっています。

 例えば、リチウムイオン電池を充電したときに起きていることを詳しく見ていきます。電池内部では、まず正極の中にある「正極活物質」の中からリチウムイオンが出ていきます。その後、リチウムイオンはセパレータ内の電解液を流れていき、負極の方に辿り着きます。これは、先ほどの図でいうと左矢印方向に行く流れになります。更に負極に辿り着いたリチウムイオンは、「負極活物質」の中に納まること、エネルギーとして蓄積されます。放電するときは、この逆の流れが起きています。

リチウムイオン電池が高容量な理由

 ここまで大雑把なリチウムイオン電池が動く原理は説明できたかと思います。次に、どうしてリチウムイオン電池が高容量なのか説明します。

 リチウムイオン電池が高容量な理由は幾つかありますが、特に重要な要素を3つ挙げます。

  1. 正極や負極の活物質の比容量が大きい。
     前項で説明したように、正極と負極には「活物質」というリチウムイオンの箱があります。当然、箱がたくさんあるほどリチウムイオンを多く収容することが可能となります。特に、「重量当たりに収容できるリチウムイオンの量(正確にはクーロン量)」を比容量と言います。リチウムイオン電池の活物質としては、この「比容量」が比較的大きいものが使用されています。
  2. 電解液が反応に関与しないため、最小量で済む。
     これはリチウムイオン電池以外の二次電池の反応機構を知っていないと分かりにくいかもしれません。少し専門的な話になってしまいますが、例えば、鉛蓄電池が充放電する際には、正極や負極と電解液(硫酸水溶液)との間で酸化還元反応が生じるため、反応に必要な分だけ電解液量が必要です。一方で、リチウムイオン電池では、電解液としては化学的な反応が起こるわけではない(厳密には少しは生じるのですが)ため、電解液量が少なくて済みます。
  3. 電圧が高い。
     リチウムイオン電池が高容量な要因としては、この「電圧」が最も大きいと考えられます。「電圧」がどのように決まるかというと、正極と負極の「活物質」の種類によって、ほぼ決まります。リチウムイオン電池の平均電圧は3.6~3.7V程度で、鉛蓄電池(2.1V)やニッケル水素電池(1.2V)に比べると非常に高い電圧を持っています。

 以上の要因から、リチウムイオン電池は容量が高く、電気自動車や各種モバイル機器の電池として広く普及しています。

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