はじめに
電気自動車(EV)の普及が進む中、バッテリーの性能と安全性はますます重要になってきています。そのための標準化されたバッテリー規格の重要度も高く、中でも「VDA規格」は有名で、電気自動車業界において重要な役割を果たしています。
本記事では、VDA規格の基本からその詳細について詳しく解説します。
VDA以外の主要なLIB関係の略称については下記記事で解説していますので、こちらもどうぞ。
また基本的な用語については下記で簡単に解説していますので、こちらもご覧下さい!
VDA規格の背景と目的
VDA(Verband der Automobilindustrie)は、ドイツ自動車工業会が制定した角形セルの規格のことで、主に自動車産業における標準化を推進することが狙いです。電気自動車用バッテリーの標準化を図ることで、互換性や性能を向上させることを目的としています。
理想的には、VDA規格によって、異なるメーカーが製造するバッテリーでも、同じ規格に準拠することで相互運用が可能となり、バッテリーの交換やメンテナンスが容易になるという利点があります。
VDA規格のサイズ
VDA規格では、バッテリーの寸法についての具体的な仕様が定められています。以下表で、VDA規格の代表的な大きさを簡単にまとめています。 (Battery Designより引用)
フォーマット | 幅 [mm] | 高さ [mm] | 厚み [mm] |
---|---|---|---|
HEV | 120 | 85 | 12.5 |
PHEV1 | 173 | 85 | 21 |
PHEV2 | 148 | 91 | 26.5 |
PHEV2+ | 148 | 125 | 26.5 |
EV1 | 173 | 115 | 32 |
EV2 | 173 | 115 | 45 |
サイズを見てわかる通り、容量の少なくても済むHEV向けでは体積が小さい一方で、航続距離のために必要容量の大きいEV向けでは体積が大きい設計となっています。
こういった規格に準拠して設計することで、バッテリーの互換性が確保され、異なるメーカー間でのバッテリー交換が容易になります。
VDA規格の影響
VDA規格の導入により、電気自動車にとっては以下のような利点が考えられます。
- 互換性の向上: サイズが規格化されることによって、異なる自動車メーカーの車両にも対応可能です。バッテリーの交換や修理が容易になって、ユーザーの利便性が向上することが期待されます 。
- 製造コストの削減: 規格化により、大量生産が可能となり、製造コストが削減されます。これによって、電気自動車の価格も低下し、普及が進むことが期待されます。
VDA規格の採用事例
実際にVDA規格が採用されている例として、ドイツの自動車メーカーをはじめとする多くの企業が挙げられます。これらの企業は、VDA規格に準拠したバッテリーを使用することで、製品の信頼性を高めています。例えば、VWやBMWなどの大手自動車メーカー、CATLやGSユアサといったセルメーカーなどがこの規格を採用したり、製造していて、電気自動車の性能向上に寄与しています。
まとめと課題
VDA規格は、電気自動車のバッテリーの標準化を進める重要な規格です。この規格により、バッテリーの互換性が向上し、製造コストが削減されるため、電気自動車の普及が促進される可能性があります。
一方で、現実にはバッテリーのサイズが標準化されても、実際の容量や電圧、使われている材料種も異なり、メーカーが変わった時の性能面での互換性は現時点では殆どないのが実情です。この点に関しては今後もセル設計による影響が大きいことから、おそらくは統一されないのではないかと考えれます。
また、VDA以外のサイズの角形セル、ラミネートセル、円筒型セル、といったように、バッテリーの形状については各社各様の状態がまだ続いており、VDA規格が今後どこまで普及するのかも課題の一つです。
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